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ぽっちゃり求人では地味目な子が採用される

風俗と東京オリンピック

国際的なイベントの前に風俗業界の取り締まりがキツくなるのは当たり前になっている2020年を迎えようとしている昨今、いよいよ東京オリンピックが近づいている。
一介の風俗ライターが仰々しい書き出しで、何をオリンピックについて語ろうとしているのかと疑問に思うかもしれない。
実は、風俗業界にとって今回の東京オリンピックは、石原東京都知事が行った歌舞伎町をはじめとしたいわゆる「性風俗浄化計画」以上の影響が懸念されているのだ。
石原東京都知事が行った浄化計画は東京都のみの限定されたものであったが、東京と名は付けどもオリンピックは日本全国を巻き込んだ影響がある。
つまり、日本全国に広がる性風俗業すべてに多大な打撃を与えることが懸念されているのだ。
それは、現在の性風俗産業の主流ともいえる「ぽっちゃり風俗」においても同様である。

太目かつキャラクターが求められている

ぽっちゃり風俗が稼げるとすれば、風俗店はぽっちゃり風俗嬢を確保しようとする。
ぽっちゃりした女性を好む風俗店利用客は年々増加しており、すでにぽっちゃりは大きなジャンルとして確立している。
ジャンルが確立すれば次に起こることはジャンルの細分化である。
ぽっちゃりというカテゴリーに加えて、さまざまな付加価値が女性に求められている。
ぽっちゃりかつ美人、ぽっちゃりかつ明るい、ぽっちゃりかつ若い、ぽっちゃりかつコスプレ、ぽっちゃりかつ女王様などなど新しいキャラクターは日々発明されているのだ。

カジュアル化した風俗店

私が駆け出しの風俗ライターであった頃、風俗店で取材する女性の多くは、言葉は悪いが「女怪」のようなお姉さんばかりであった。
見た目は小奇麗であっても、さすがに風俗の世界で顔を出して働こうというのだから切った張ったの世界を生き抜いてきたのであろう。
取材のすがらにすれ違う顔出しをしない風俗嬢も、どこか後ろめたいような運命を呪っているような、陰のオーラを纏っているような女性ばかりであった。
そんな独特な世界観をもつ風俗業界が好きで、紆余曲折の生い立ちや生き方を女怪たちに教わったのだから感謝の言葉を幾つ積み上げても足りないくらいだ。
そんな思いから、今、風俗業界で起こっているぽっちゃりムーブメントを少しでも支援したいし、不況と言われる昨今において重ねて来る「東京オリンピックショック」においても、どうにか全ての風俗業界の仲間たちには生き抜いてもらいたいという希望を持っている。

ことの始まりは、いわゆる風営法の改正をきっかけに性風俗は健全化されたことだ。
ヤクザの色や陰気な空気は消え失せ、明るいネオンと女性たちの笑い声が風俗店には増えた。
コンビニで売っている求人誌を手にして、現役の女子大生が風俗店に面接にやって来るなんて事例が、深夜の全国ネットのテレビ番組で多く取り上げられるほどカジュアルで一般的な仕事のひとつとして「風俗で働くこと」が認められていったのだ。

ただ寝ているだけで稼げたバブル時代

風俗がカジュアル化した弊害としては、風俗店が接客業であるということを知らずに、求人雑誌を片手に面接に来る女性が増えたということだ。
インターネットが起こる以前、男性向け風俗店のムーブメントは「素人女性」であった。
街を歩いているような一般的な女性が風俗店に増え、ソープランドのような接客技術がない店、いわゆる素人を売りにしたデリバリーヘルスが風俗産業の中心に移っていく時代だ。
女性向け風俗求人誌にも「誰でも稼げる」「特別な技術はいらない」というキャッチコピーが躍り、実際にただ寝ているだけである程度の報酬を女性が得られていた時代なのだ。
時代はバブル景気に踊った。
男性たちの財布も豊かで、風俗遊びを楽しむ男性側もいたってカジュアルであったのだ。

女性であれば何でもよいという誤解

風俗産業は不景気のあおりをもろに受ける業界であるしかし、景気が悪くなると男性の財布の紐も閉まるようになっていった。
週に3回風俗遊びをしていた男が週1回に減り、接待で風俗店を利用していた営業マンは領収書が切れなくなったために風俗店から足が遠のいた。
素人がただ寝ているだけのサービスに対価を払う男性客が激減したのだ。

すると、風俗店はそもそも接客業であることが見直される。
ソープランドのような、男性客を全身全霊で接待する風俗店が見直され、同時に新風俗として注目されたデリバリーヘルスの接客技術も向上していった。
素人であった女性が、プロフェッショナルを求められるようになったのである。
女性であればだれでも稼げるといった性風俗店は業界の流行、生存競争により淘汰され消えていったのだ。

風俗業界でいま何が起こっているのか

スマホの普及により誰でもインターネットに接続出来る環境が整った景気はさらに悪化してくのだが、別のベクトルとして、社会には情報があふれるようになった。
インターネット時代の到来である。
風俗求人誌はのきなみ休刊し、多くの風俗情報が男性向け女性向けを問わずインターネットに移行していくようになる。
一つの営業、求人サイトに何百、何千件ものお店が掲載されているモンスターサイトが多くオープンし、情報はいつでも飽和状態であり、雑誌の入り込む余地はなくなってしまったのだ。
私が請け負う仕事も雑誌からインターネットに自然と推移していき、現在の原稿依頼の9割近くがインターネット媒体によるものだ。

さらに、インターネットでさえも飽和状態にある昨今、さまざまなユニークなサイトがオープンしている。
試しに「ぽっちゃり求人」と検索して上位に表示されるサイトを見て欲しい。
ぽっちゃりやデブを売りにした風俗店の求人しか掲載されていないことが分かると思う。
つまり、インターネットの世界でも、ジャンルの細分化が始まっているのである。
そんな移り変わりの激しい情報社会のなかで、現在のトレンドである「ぽっちゃり風俗」こそ稼げるという情報は多く見受けられるが、そこで抜けているのは「風俗は接客業である」という啓蒙だ。
まさに「女であれば誰でも稼げる」あのバブル時代と同様なことが、「太目であれば誰でも稼げる」という誤解を、この不景気な風俗業界で与えているのである。

高収入のアルバイトをしたいと望んでいる女性が多くいるのは、バブル時代の比ではあるまい。
にもかかわらず、「ぽっちゃりしていれば誰でも稼げる」という嘘の情報ばかりが伝播しているために、その情報だけを信じた太目女性たちが面接で落とされ続けているのだ。
これでは、せっかく起こっている「ぽっちりムーブメント」が、「素人ムーブメント」同様に消費されかねない。

真面目さが求められるのは風俗も同じだ

風俗で働きたいと望む女性たちよ、風俗は接客業なのだ。
男性客は工場のように流れ作業でこなすものではなく、心を持っている。
ただ太目な女性が寝ているだけでは稼げない。
それはちょっと外見が可愛くても同様なのだ。

求人情報の「ぽっちゃりであれば稼げる」という情報のみを信じて、風俗店の面接でただへらへらとしているだけではもはや採用はされないだろう。
賢い風俗店であればこそ、風俗業がサービス産業であるということを知らない女性を採用する余裕はないはずだ。
高収入だからこそ、まじめに仕事と向き合える女性でなければ、風俗嬢にはなりえないのだ。
ぽっちゃり風俗嬢が地味目な方が採用されるのは、そういう雇用側の経験則がある。
ただ太目であれば採用されるわけではない。
風俗業とは何なのか、きちんと自分の中で考えて求人情報を読み込んでくるような真面目な女性でなければ、風俗店は男性客の前に貴女を立たせようとはしないのだ。