私はぽっちゃり風俗嬢であるという自負
風俗誌を見ずとも、居酒屋で一献傾けると男性同士ならば女性の好みの話題になることは多いだろう。
その話題において好みの女性の主流は、人当たりの良い大人しめの女性かモデルタイプのきれいな女性。
つまりはテレビでよく見るような女優やタレントであり、大手広告代理店なのが統計を取る「好感度ランキング」が高い女性である。
太目の、ぽっちゃりタイプの芸能人も好感度が高い女性もいるだろうが、それは性の対象として語られることは多くはなく、語るとしても飛び道具としてや話のオチとしての扱いの方が主流である。
しかし、とある風俗誌の調査がある。
着目すべきは、自ら「ぽっちゃり風俗店」と自負する風俗店が1.7倍に増加し、自ら「私はぽっちゃり風俗嬢である」と自負する風俗嬢が14ポイント増加しているという点だ。
風俗店にしても、風俗嬢にしても自分からすすんで「ぽっちゃり」であると宣言する動機は何なのだろうか。
ぽっちゃりしている女性は性の対象としては飛び道具やオチとしての扱いが主流ではあるのに、こと風俗嬢として自分はぽっちゃりだと自負したほうが好ましいと思う理由は、ずばり自分は「ぽっちゃり風俗嬢である」と宣言したほうが稼げることに違いはない。
ぽっちゃり風俗嬢と宣言した女性の本音
たしかに若い女性なのだから、「自分がぽっちゃりしている」「他人より太っている」と心から思うのは抵抗があるに違いない。
ぽっちゃりした女性でも、男である私から見てどう見ても太っていないと思われる女性にしても、「私は太っているから」という発言は「いやいや、そんなことないよ」というレスポンスの呼び水にしかすぎない。
ぽっちゃり風俗嬢たちの本音もそうであり、実際は痩せたいと思っているのではないかと疑ってかかった時期があったことは恥ずかしい限りだ。
彼女たちぽっちゃり風俗嬢は、ぽっちゃりと思われることを心から喜んでいるのである。
最初は、まさに稼げるからと自分から「ぽっちゃり宣言」をしたのであろうが、お金が貯まると心も余裕ができる。
何人もの風俗嬢に取材で出会い、私費でも話をした女性たち全てなのだけれども、ポジティブにぽっちゃりした自分を楽しんでいるのが本音だと、全員が口をそろえて言う。
これは営業トークではないのは、彼女たちの目を見ればわかる。
人を見る目はない方だとは思うが、何人もの風俗嬢たちと出会ってきた私が思う実感である。
ぽっちゃり風俗嬢は、心からぽっちゃり風俗嬢という仕事を楽しんでいるのが本音なのだ。
風俗求人という女性側からみた風俗
ここで、私がなぜ風俗業界の労働面に興味をもったのかを簡単に描きたいと思う。
そもそも、男性向けの雑誌でライター家業をスタートした私だが、徐々に女性向けの求人誌の仕事も頼まれるようになってきた。
風俗店の求人担当は、他店の情報にも詳しいライターから情報を仕入れようとするのが常である。
もちろん、本質的なことは守秘義務があるが、どこかギブアンドテイク的なことがあるのは否めない。
男性誌では、「もしかしたら想定外のエロイことがあるかもしれない」という匂いを醸し出すのがライターとしての腕の見せ所ではあるが、女性向け求人誌の記事では「まったく危ないことはない、楽しく稼げる職場です」というメッセージを求められる。
そもそも、社会一般の認識として、風俗店は反社会団体が運営しているなど、借金のかたに風俗に落とされたなど、一昔前の誤った認識が今だに残っている。
それを一般の仕事やアルバイトと何ら変わらない接客業であると発信すればいいだけなのであるが。
ライターとして紙面には空なりの演出は施すが、嘘は書かない主義である。
取材を受けるような女性に限ったことなのかもしれないが、やはり稼ぐことが楽しいことを根本に、男性に求められることと、店から評価されることそれ自体を喜んでいるのだ。
男性誌の仕事だけをしていてはわからない、その反面にある風俗で働く女性を取材して感じた、仕事としての風俗という視点が今まで気づくことのなかった新たな風俗の魅力を教えてくれたのだと思う。